GRANDPRIX MAGAZINE / OWNER’S COLUMN / 2026.11.04
勝つための覚悟と、人を動かす力。
山本雅史さんと迎えた、20周年のフィナーレ・トークライブ
9月から3か月連続で開催してまいりました、GRANDPRIX名古屋栄店20周年記念イベント。 そのトリを飾ってくださったのは、元ホンダF1マネージングディレクターの山本雅史さんでした。
2時間、そして延長戦まで。 実体験に基づくお話が次々と飛び出す、濃密なトークライブとなりました。 ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。
「動画と録音だけはNGにしてね」
今回の打ち合わせの段階から、山本さんにはこんなお話をいただいていました。
「もう時効だから、いろんな面白い話ができると思うよ。
ただ、動画と録音だけはNGにしてね。なんでも話すからさ」
主催する側としては、楽しみになるお言葉です。 そして実際に始まってみると、その言葉どおり、会場にお越しいただいた方だけが聞けるお話が盛りだくさんでした。
この記事を書きながら、どのエピソードをご紹介できるか、しばらく考えていたのですが…… SNSやブログには書けないお話が、あまりにも多い(笑)。
ということで今回は、当日の流れと、私自身の印象に残ったところを中心に振り返ってみたいと思います。
冒頭から、早くも「プランB」が頭をよぎる。
今回MCをお願いした稲野一美さんと矢本さんと3人で、開演前に進行の打ち合わせと予行練習をしていました。 前半、休憩、後半。お聞きしたい内容も、スライドも準備して、いざスタートです。
冒頭は、直前のF1メキシコGPでアントネッリ選手がワールドチャンピオンを決めた話題から。 ところが、そこからお話がどんどん広がっていきます。
気づけば、休憩に入るまで、用意していたスライドを1枚も使っていない。
これは……早くもプランBだな、と(笑)。
山本さんのお話には、ひとつの出来事から、そこに関わった人、その時の判断、 さらに別の出来事へとつながっていく面白さがありました。 台本を見ながらも、つい「その先も聞きたい」と思ってしまう展開でした。
前半は、山本雅史さんの歩みから。
前半は、生い立ちやホンダ入社のきっかけから、モータースポーツの仕事、 そして2021年のチャンピオン獲得へ。 山本さんがどのように歩んでこられたのかを伺いました。
前半で伺った主なお話
- 生い立ちと、ホンダへ入社されたきっかけ。
- 若い頃はどのような社員だったのか。 仕事への向き合い方や、印象に残っている出来事。
- カートレーサー時代の思い出と、ソーラーカーレースで控えからエースドライバーを目指した時の決意と作戦。 走る側の経験が、その後の仕事にどうつながったのか。
- モータースポーツに関わる仕事をするようになったきっかけ。
- ホンダのモータースポーツ部門で責任ある立場を任された時のお気持ちと、 レッドブル・ホンダに携わることになった当時のお話。
- 2021年のドライバーズ・チャンピオン獲得までに、最も苦労されたこと。
特に、ソーラーカーレースのお話は印象に残りました。 控えという立場から、自分がどう動き、どうチャンスをつかもうとしたのか。 その経験が後の仕事にもつながっていくところに、山本さんらしさを感じました。
「Engine mode 11, position 5」の向こう側。
2019年のオーストリアGP。 レッドブル・ホンダとしての初優勝を振り返るお話では、 有名なあの言葉の裏側も伺うことができました。
Engine mode 11, position 5
田邊さんと山本さんのやり取り。 社長への直談判、深夜の電話。 そして、許可が出たエンジンモード。
レース中の短い言葉の向こう側に、どれほどの思いや判断があったのか。 山本さんの言葉で聞くことで、その場面が違った重みを持って感じられました。
詳しいやり取りは会場にいらした皆様との思い出にしておきますが、私には、 勝つための直感を信じることと、その判断に覚悟を持つことが詰まったお話に感じられました。
結果を知っているレースでも、そこに至るまでを当事者から聞くと、こんなにも見え方が変わる。 その面白さを味わった時間でした。
後半は、人と組織をどう動かすか。
後半は、リーダーとしての山本雅史さんが、現場の関係者の気持ちをどう動かし、 同じ目標へ向かっていったのか。 F1のエピソードを通して、人や組織との向き合い方を伺いました。
後半で伺った主なお話
- クリスチャン・ホーナー氏、フランツ・トスト氏、ヘルムート・マルコ氏など、 レッドブル陣営の主要メンバーのお人柄や仕事の進め方。
- マックス・フェルスタッペン選手、セルジオ・ペレス選手のお人柄やエピソード。
- 角田裕毅選手とのエピソード。
- 「F1村」ならではの、印象に残るエピソードの数々。
- 人材を育てるうえで大切にしてきたこと。 若手やスタッフの成長につながった経験。
- レッドブルのような巨大なF1チームとの折衝。 考え方や文化の異なる相手と、どう信頼関係を築くのか。
- サーキットの現場と栃木の研究所など、離れた拠点のチームワークづくり。
- 目標達成に向けた、自分と組織の動かし方。 厳しい状況でも前進するために大切にしている考え方。
私自身、お店を運営し、スタッフと一緒に仕事をしている立場として、 考えさせられるお話がたくさんありました。
離れた場所にいる人たちと目標を共有すること。 考え方の違う相手と話し合い、物事を前へ進めること。 F1という大きな舞台のお話でありながら、日々の仕事にもつながる部分を感じました。
また、国内のモータースポーツ部長を務められていた頃の、 ジェンソン・バトン選手のSUPER GT参戦にまつわる秘話も、とても面白かったです。 こちらも詳しくは書けませんが、会場で聞くからこそのお話でした。
速さとともに、キャリアを支えるチームを。
最後に伺ったのは、著書でも触れられている 「日本人ドライバーが世界で勝てない理由」について。 出版当時から現在までを踏まえて、今の山本さんのお考えをお聞きしました。
例に挙がったのは、フェルスタッペン選手のマネージャー、レイモンド氏のお話です。
ドライバーの将来のキャリアに常にアンテナを張り、適切なタイミングで、すぐに動けるか。 目の前に来たチャンスをつかみ、運を自分たちのところへ引き寄せる体制を、 ドライバーを支えるチームとしてつくれるか。
若い頃から、ドライバーと一緒にキャリアを考え、 支えてくれるマネージャーや交渉人の存在。
実例を交えたお話から、その重要性が伝わってきました。 世界を目指すドライバーの育成とともに、その挑戦を支える人たちも大切なのだと、 改めて考える機会になりました。
貴重な写真、そして驚きのじゃんけん大会。
後半では、スライドを使ったお話もかなり進みました。 山本さんのドライバー時代の貴重なお写真や、 関係者の皆さんと過ごされた舞台裏の写真も満載でした。
こちらも掲載はできず、ご紹介できないのが残念ですが、 お越しいただいた皆様だけのお楽しみということで……。
そして、じゃんけん大会へ。
元ホンダF1マネージングディレクターの山本さんならではのプレゼントに、 参加者の皆様もびっくり!
お話を聞くだけでも十分に濃い時間だったのですが、 最後まで驚きのあるトークライブとなりました。
サイン会・2ショット撮影まで、ありがとうございました。
締めくくりは、ご参加の皆様とのサイン会・2ショット撮影会。 最後までお付き合いいただき、 予定の終了時刻から30分ほど延長して、無事に終了となりました。
熱心にお話しくださった山本さん、 話題を引き出しながら進行してくださった稲野さん、 そして長い時間ご参加くださった皆様に、心より御礼申し上げます。
楽しかったからこそ、進行の反省も。
今回も想定以上のボリュームとなり、 進行面では反省しなければならない部分がありました。 貴重なお話をもっと伺いたいという気持ちと、時間を守って進めること。 その両方を、今後のイベントではより良い形にしていきたいと思います。
それでも、皆様から 「楽しかった」「またやってほしい」 というお声をいただけたことを、大変うれしく思っています。
実体験に基づくお話ばかりで、私自身も大変楽しいトークライブでした。 皆様にも、心に残る時間となっていましたら幸いです。


